みを語りあった直後なので、何の無理もなく、わたくしは妻の意見に同意することができた。そしてK子が口ぐせのように、その妹に、
 ――お前は先生にだけはなるな。先生って、とてもむずかしいつらい苦しいものよ。
と語っていたということを妻からきいて、暗い気持ちになった。



 K子が妻を訪ねて、わたくしの住まいに来たのは、七月のはじめの日曜だった。妻の教え子であるO村の青年が、見事なさくらんぼをもって訪ねてきていた。この農民組合青年部で活躍しているわかい青年と対談しているところへ、K子も妻を訪ねてきたのだった。
 わたくしは、この青年と、むかし戦闘的だったO村の農民組合の現在の状況や、農地改革に対する農民たちの関心のうすいこと、小作農が自作農になりたがらない気持ち――などの分析をやったり、日本経済をつつむヤミとインフレにより形だけの富農が発生しつつあること、そして農村支配が地主層からこの富農層へうつりつつあること、日本の独占資本とこの富農との結合方向が見えていることなど最近の農地農民の問題を語りあった。
 わたくしと青年との語らいを、K子はだまってきいていた。そして青年が去ったあとで、わた
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