、不思議なものをごらんに入れて各位の心魂をお驚かせ申すつもりでございます。……それにつきまして甚だ申訳がありませんが、提灯がありましたら借用ねがいたい」
と言って、提灯を借受けると、スタコラと出島の蘭館を出て行った。
福介は、先生が余り物事に凝り過ぎて、とうとう気が狂《ふ》れてしまったのだと思った。昼は芭蕉扇を腹の上にのっけて夕方まで眠りつづけ、とッぷりと日が暮れると、蝋燭やら物差やら縄梯子やら、何に使うのか得体の知れぬ雑多なものをひと抱えにして長崎屋を飛出して行き、夜がほのぼのと明けるころ、着物に鈎裂を拵《こしら》え身体中蜘蛛の巣だらけになってがッかりと憊《つか》れて帰って来る。
こんなことが五日程つづいた後の朝、何時になく大元気大満悦の体で帰って来て、
「福介や、とうとう鬼唐人《きとうじん》のからくりを看破《みやぶ》ってくれた。ひとを馬鹿にしやがッて、実にどうも飛んでもない野郎だ。こういう風にぎゅッと尻尾を押えた以上は、いくらジタバタしたってもう逃しっこはない。伝馬町の獄門台へ豚尾《とんび》のついた梟首《さらしくび》を押載《おしの》せてやるから待っておれ……何を魂消《たまげ》
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