かえしても訊けなかった。
もしかしたら……。それだっていいではないか。この美青年を見てどんな女が愛さずにいられるであろう。仮りに彼のうしろにどれほどの女が横たわっていようと、それは自分にとって関係はない。この現在の真実に自分を愛してくれるなら、彼の過去の経歴などはどうでもいい。まして、自分こそ過去を偽っている。久我をとがめ立てする権利は自分にはない。手紙の主をうちあけてくれぬのはすこし情けないが、それなら、それでもいいのだ……
しかし、この二三日葵につきまとっている不安というものは、そんなたわいのないことではなかった。いささか奇異な、もっと捕捉しがたいものだった。
久我はいいようなく優しく、のみならず、ときにはすこし度をこえたようなところさえあるのだった。葵にとってこれが嬉しくないわけはない。が、同時にまた、なにか奇妙な感じも起させるのだった。この優しさは夫が妻にたいするそれでなくて、不幸な人間にたいする憐憫の情にちかいように葵には思われるのである。思いあわせると、いろいろとそんなところが気につくのだった。
このホテルへついてから、葵を慰めいたわるために、久我はさまざまと骨を折
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