のけ肩をふりながら出ていった。
長く伸びている乾のそばへよると、西貝はその顔のうえへしゃがみながら、
「おい、どうした」
と、ふざけた調子でいった。
上唇から顎へかけて、夥しい鼻血が流れ、暗がりで見ると、急に髯がはえたようにみえるのだった。むくんだように顔は腫れあがり、熱をもってテラテラと光っていた。
西貝の声をききつけると、乾は腫れあがった瞼をおしつけながら、
「やられましたよ。(と、案外に元気な声でいいながら、そばにころがっている金盥を指さし)すまないが、階下へ行ってそれに水を汲んできてくださいな。……それから、台所に手拭いがあるから……」
西貝が水を汲んで二階へあがってみると、乾は寝台に腰をかけ、新聞紙をひき裂いては、しきりに鼻孔につめ[#「つめ」に傍点]をかっていた。
「おい、乾老。……いったい、どうしたってんだ」
乾は手拭いをしぼって鼻梁にあてながら、
「……あたしが密告したのをききこんでやってきたんです。……どうも、ひどい目にあわせやがった」
すると、西貝はせせら笑って、
「……ふん、そうか。それなら、ま、仕様がなかろう。……いずれ一度はやられるんだ。因果応
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