なんといって」
「シャンハイニユクモヨウ。コウベ、トア・ホテル」
 乾は膝の上へ頬杖をついて、しばらく黙っていたのち、藪から棒にたずねた。
「いま、何時だ」
 腕時計に眼を走らせて、鶴がこたえる。
「七時十分」
 乾が急にたちあがる。鶴の手首を握りしめながら、
「いいか、これからすぐ神戸へ発つのだ。七時三十分の汽車。あと二十分。金は?」
「五十円ばかし」
「よかろう。……(じっと、鶴の眼を見つめながら)……それから?」
 ハンド・バッグを顎でさしながら、
「あの中にはいっている」
「よし!」
 そういうと、机へはしり寄って、ペンの先を軋ませながら、せかせかと手紙のようなものを書きだした。間もなく、二つの封筒を持って鶴のほうへもどってくると、それを渡しながら、
「この茶色のほうを神戸まで持って行くのだ。渡したらすぐ帰ってこい。こっちの白いほうは、行きがけに西貝のアパートへおいて行け。手紙受へ投げこんでおけばいい」
 無言のままで立ちあがると、鶴は手早くゴム引のマントを着、頭巾をま深く顔のうえにひきおろした。こうすると、まるで小学生のように見えるのだった。
 乾は先にたって戸口までゆくと、
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