代の大難工事が始まった。すると絲満|南風《はえ》太郎は、自分の郷里の絲満から、二百人あまりの人間をだましてつれてきて、これを道庁の請負の大林組へ一人八十円パで売り飛ばした。売られた方はたまらない。なにしろ名代の監獄部屋だ。気候が悪い仕事が荒い、そいつが出来あがったときに生残った人間は二百人のうちたった十八人。……あたしの父親もだまされてうられて、そこで生命をおとした一人だが……こうして貯めこんだ金が三万円ばかり。怖くてたまらないから、銀行にも預けずに、自分の部屋へ金庫まがいの支那櫃を据えつけ、ひとが見たら蛙になれ、と隠しておいた。これを知ってるのは絲満と、当時の情婦、そこにいるおハナさんの二人っきり。ハナさんもながい間ねらっていたが、用心堅固で手がだせない。そればかりか、碌に小遣いもくれないから、とうとう喧嘩わかれになってしまい、もだもだしながら、洲崎の〈金城〉ってバアで稼いでいるうち、同気相呼ぶで知合ったのが、この乾君。……そこでいろいろ考えたすえ、尼ヶ崎でダンサーをしていたあたしを呼びよせ、お前のおやじの敵は絲満だ、おやじの仇を討ちたくないか。討つ気はないか。その気があるならかなら
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