の鋭い男が、ものを言うたびにいちいち顎をしゃくった。
「信州たって広いや。……信州のどこだ」
「存じませんです」
男は、むっとしたようすで、
「なんだ、存じません、存じません。……下手に庇いだですると、気の毒だが君もひっかけるぜ[#「ひっかけるぜ」に傍点]。……言え、信州のどこだ」
乾は膝に手をおいてうつむいていたが、やがて、顔をあげると、
「申しあげます。……が、そのまえに、ひとつ伺いたいことがございます。……久我が殺ったというのはたしかなんですか」
「それをきいてどうする」
「それを伺ってからでないと、あたしは寝ざめの悪いことになります。ひと月か二月の浅いつきあいだが、友人は友人。充分な証拠があったというのなら止むを得ませんが、そうでないのなら、たとえこのまま拘引《オテアテ》をうけても、何事も申しあげかねるんでございます。……しかし、久我が殺ったということなら、知っていることは洗いざらい申しあげるつもりです。……ご承知の通りあの絲満の財産というものは、どの位あったか知りませんが、あんなことさえなければ当然あたしの手へはいっていたはずなんだ。それをむざむざと横合いから攫われたと思
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