とウントネタだ。いさぎよくまけっちまえ。ひとの命を十両で売ったと思えば寝ざめがわるいが、大義親を滅す、さ。一旦志をたてて、日金貸しとひっ組んだ以上は、この位の覚悟はいるだろうさ。(乾のほうへふりかえると)おい、おい、そんなに堀のほうばかり見てるな。すこし、こっちを向け。……(あたりを見まわして)まるでこりゃ生世話物《きぜわもの》だな。……上手《かみて》はおあつらえむきの葦原、下手は土手場で木場につづくこころ、か……。木魚がはいって、合方が禅のつとめ[#「禅のつとめ」に傍点]とくれあ、こりゃあ本イキだ。四手網にからんであがってくるのは血染の衣裳……。そういえば、だいぶ暮れてきたな。……おい、乾、そんな凄い面をするな。だまっていねえで、なんとか言え。……貴公もようやく念願を達するんだ。すこしはしゃげよ、おい!」
 乾は背中を丸くして煙草を吸いつけながら、
「念願だか、念仏だかわかりゃしませんよ。そんなものがあがってきたらお慰みさ」
「出ねえと知って無駄骨を折るいんちきもないもんだ。出ねえと知って……」
「はじめっから、とんちきを承知でやってる仕事だ。……妄執てなあこのことですよ。こいつが晴
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