ら巡査がやってきた。あわてて一丁目の角を右に曲って、一直線に深川塵芥処理工場の方へゆく。そこの近くにある曲辰の材木置場のところまで行って、そこで、突然に大地へとけこんでしまったのです。(久我の顔を見つめながら)ここまではどうでしょう?」
久我は微笑しながら、いった。
「面白いですね。よく判ります。それから?」
那須はますます能弁になって、
「……ところで、この犯罪の最も短い半径内に、容疑者の権利をもつ二人の女性がいます。ひとりは、絲満の以前の情婦で……いま〈フレンド荘〉をやっている朱砂ハナ。もうひとりは、久我夫人すなわち葵嬢。……だが朱砂ハナのほうは、事件のあった十八日以前に、密淫売のかどで検挙《アゲ》られて、事件の当夜は洲崎署の留置場にいたんです。……まずこれ以上の完全な不在証明はありません。そこで、久我夫人のほうですが、これは二十二三で、上品、すらりとした美人です。本来ならば、なんとしてもまぬかれないところです。つまり美人なるがゆえに、こういう災難を蒙ることになった。美人になりたくないもんです。が、このほうも幸いなるかな、完全に近い不在証明があった。その夜は、夜の八時から十二時
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