ぼって、眼のまえが暗くなった。支離滅裂な考えが、ピラピラといくつも頭のなかを走りすぎた。
〈……久我はあたしを愛していたのではない。……この証拠を握るためにあたしと結婚したのだ。……卑劣な刑事根性……〉
握りしめていた茶碗が、思いがけなく葵の手を離れて壁のほうへ飛んでゆき、そこで鋭い音をたてて微塵に砕けた。
卓のむこうに飽気にとられたような久我の顔があった。
葵はその顔を、キッと睨みつけながら、
「そんなにしてまで、あたしを人殺しにしたいんですか。……罠にかけるようなことをして、それを手柄にするつもりなんですか。……卑怯だわ。あなたがそういうなら……」
〈あたしにも言いたいことがある。あたしこそ、あなたが犯人じゃないかと思っている。でもいちどだってそれを口にだしたことがあるか。それなのに、あなたは……〉
耐えがたい孤独感が葵のこころをつよく絞めつけた。卓にうち伏すと、声をあげて泣いた。久我が立ってきて葵の肩へ手を置いた。
「……葵君、君は疲れているんだよ。それで、なんでもないことが癇にさわるんだ。すこし休養しなくては駄目だね。……そういう僕も、つくづくこの稼業がいやになった。こ
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