たろうが、狭山をやっつけたやつにァ花子をやるべとひどく叔父ぶってもったいぶったことをいいました。みないやおうはなく、もう花子の婿にでもなった気で大よろこびでありました。翌じつのあさ十時ごろ乾燥所のまえのひら地へあつまり、みなで冷酒をひと口ずつ飲みまわしまして、いよいよ決闘にとりかかりました。まぶしいように晴れた朝で、みな上きげんでニコニコ笑っておりました。さいしょの相手は鈴木でありまして、あいつは匕首をもち、わしはおっとせいを撲りころす太い大棍棒でむかいました。鈴木はもと長万部《おしゃまんべ》のばくちうちで、ひとをころしたおぼえのあるやつで、みなのほうへふりかえって舌をだしたり、じょうだんをいったりしました。匕首を鞭でもふるうようにうまくさばいてチョコチョコつけこんでまいりますが、わしには、こしゃくらしくてただおかしいばかりでした。しばらくあしらっていましたが、しちめんどうくさくなり、ひきのめらしておいて力まかせに頭のまんなかをぶち叩きますと、あおむけに、すてんと倒れてしまいました。なんともいえぬおかしな顔をしているので、みなで腹をかかえて大わらいしました。つぎに、早乙女がかかってきま
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