ててなにかしきりに囁いていたが、そのうちに中大工町《なかだいくちょう》のかどで客待ちしていた辻駕籠を二挺よぶと、さきの駕籠に娘を乗せ、あとの駕籠にじぶんが乗って扇橋《おうぎばし》のほうへ行く。
 三人は高はしょり、駕籠のあとについてトットと駈けだす。

 向島の寺島村。
 皮肉なことに、三津五郎の寮と田圃ひとつへだてた背中あわせ。大和屋になりすまし、五人の娘に取り巻かれてヤニさがっているところへ四人が踏みこんで、
「この馬鹿野郎、飛んでもねえ真似をしやがる」
 本所|横網町《よこあみまち》の薬種問屋《やくしゅどいや》、大松屋又蔵の三男の又三郎。これがひどい芝居気ちがい。三津五郎に似ていると近所の娘に騒がれるのでつけあがり、チラと耳にした評判と菊人形の三津五郎の小鰭の鮨売から思いついて、こんな大それたことをやった。
 風呂や髪床で、でたらめな評判を振りまいて歩いたのも、言うまでもなく、この又三郎。
「それにしても、馬鹿にも智慧。じぶんが鮨売にならずに、役者の着つけでそのうしろから行き、濡衣のほうは鮨売にひっかぶせて、じぶんのほうはぬけぬけと娘を引きだそうという阿呆は阿呆なりによくかんがえ
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