顎十郎捕物帳
永代経
久生十蘭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)角地争《かどちあらそ》い
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)浅草|柳橋《やなぎばし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)久生十蘭全集 4[#「4」はローマ数字、1−13−24]
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角地争《かどちあらそ》い
六月十五日の四ツ半(夜の十一時)ごろ、浅草|柳橋《やなぎばし》二丁目の京屋吉兵衛《きょうやきちべえ》の家から火が出、京屋を全焼して六ツ(十二時)過ぎにようやくおさまった。
隣家は『大清《だいせい》』というこのごろ売りだしの大きな湯治場《とうじば》料理屋だが、この日はさいわいに風のない晩だったのと水の手が早かったのとで、塀を焼いただけで助かったが、京屋のほうは思いのほかに火のまわりが早かったと見えて、吉兵衛は逃げだす間がなくて焼死してしまった。
京屋吉兵衛は代々の紺屋《こうや》で、三代前の吉兵衛は京都へ行って友禅染《ゆうぜんぞめ》の染方をならって来て
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