まった顔つきで、
「なるほど、そういうわけだったのか。……藤波さん、あなたの勘違いはもっともだが、これにはこういうわけがある。そいつをひとつ聞いてもらわねば……」
 藤波は、冷然たる面持で、
「言うことがあったら、出るところへ出て申しあげろ。……おい、かまわねえから繩を打ってしまえ!」
 声に応じて、バラバラと走りでた下ッ引。
「神妙にいたせ」
「神妙にいたさば、御慈悲を願ってやる。悪る足《あ》がきをしねえで、お繩をうけろ」
 四方から飛びついて、高手小手《たかてこて》にいましめる。

   香聴《こうき》き

 有為転変《ういてんぺん》の世の中。きのうまでは江戸一の捕物の名人。将軍の御前で捕物御前試合の勝名のりをうけたほどの身が、きょうは丸腰にされて揚屋《あがりや》の板敷の上。変ればかわる姿である。
 さすがにうっそりの顎十郎も、多少の感慨があるらしい。秋風落莫《しゅうふうらくばく》と端坐している。もっとも、表面そう見えるだけで、肚の中ではなにを考えているのか知れたもんじゃない。
 ものの半日あまり、枯木寒巌《こぼくかんがん》といったていで、半眼をとじながら黙々然々《もくもくねんねん
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