狂《すっとんきょう》な声、
「いよウ、藤波さん、これは、これは、珍客の御入来。やはり、あなたもポチポチの組ですか。……そんなむずかしい顔をして突っ立っていないで、まア一杯おやんなさい。間もなく座持ちのいい乙姫さまが立ち現れて来ます。まアどうか、お平らに」
藤波は、痩せた権高《けんだか》な顔を蒼白ませ、立ったままジロジロと顎十郎の顔を眺めていたが、やがて噛んで吐き出すように、
「ねえ、仙波さん、あなたがぬすっとの用心棒をつとめていたとは、さすがのこの藤波も、きょうのきょうまで気がつかなかった」
顎十郎は、トホンとした顔つきで、
「手前がもそっと[#「もそっと」に傍点]飲めばよかった、たア、いったいなんのことです」
「とぼけちゃいけねえ、なにを言ってやがる。こんなところでとぐろを巻いていて、夜番の眼をそらし、裏でこっそり金蔵を破らせるなんてえのは、たしかにうまい趣向。貴様らしい思いつきだ。今にして思いあわせると、以前ちょっと甲府で役についていたことがあるというだけで、その後、四五年、どこでなにをしていたものやら誰も知っているものがねえ。……縁につながる叔父の森川庄兵衛のところへフラリと
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