顎十郎捕物帳
日高川
久生十蘭
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)鱗《うろこ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)|南方有[#レ]塚《なんぽうにつかあり》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#歌記号、1−3−28]
[#…]:返り点
(例)南方有[#レ]塚
−−
金の鱗《うろこ》
看月《つきみ》も、あと二三日。
小春日に背中を暖めながら、軽口をたたきたたき、五日市街道の関宿の近くをのそのそと道中をするふたり連れ。ひょろ松と顎十郎。
小金井までの気散じの旅。名代《なだい》の名木《めいぼく》、日の出、入日はもう枯葉ばかりだが、帰りは多摩川へぬけて、月を見ながら鰻でも喰おうというつもり。
ひょろ松は、小金井鴨下村《こがねいかもしたむら》の庄屋の伜で、百姓をきらって家督を弟にゆずり、今ではちょっと知られた御用聞になったが、江戸からわずか七里ばかりの自分の郷里へも、この六七年、足をむけたことがない。
ところで、この
次へ
全25ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング