に教えてすましているようなやつだから、眷族を呪文縛りにして一匹ずつ袂へ入れて帰るなんてえのも、どうせ、なにか、ふざけたことなんでしょう」
又右衛門は、途方に暮れたような[#「暮れたような」は底本では「暮れたように」]顔つきで、
「なるほど、そう聞けば、いかにももっともだが、しかし……」
ひょろ松は、手でおさえて、
「まア、お聞きなさい。……たぶん、自分で夜具の裾へ蛇を忍びこませておいて、もったいぶって呼びよせるように真似をするぐらいが落ち。こりゃア、ずいぶんありそうな話だ。……それはそうと、ねえ、阿古十郎さん、ありもしないことを、口から出まかせにしゃべくってこっちを威《おど》しあげ、お布施でもたんまりせしめようという魂胆《こんたん》でしょうが、それにしては、すこしやり方があくどすぎるようです。……なにもそうまでしなくとも……」
顎十郎は、大真面目にうなずき、
「おれも、さっきから、そこのところを考えているんだ。名主どのを誑《たぶら》かすだけにしては、すこし巾《はば》がありすぎる。……こりゃア、なにか曰くがあるぜ。お布施なんていうケチなことで、お小夜さんとやらをそうまでいじめつける
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