のすけ》、帆係下一番《ほがかりしたいちばん》猪三八《いさはち》、同|上一番《かみいちばん》清蔵《せいぞう》、楫取|弥之助《やのすけ》、ほかに助松《すけまつ》以下|船子《ふなこ》、水夫《かこ》が六人。ところで、その二十三人は、ただのひとりも船にいない!
 遠島船はいうまでもなく囚人をつんで行く船だから特別なつくりになっている。
 船は二枚棚につくり、上棚の内部を、表《おもて》の間《ま》、胴の間、※[#「舟+夾」、186−上−16]《はざま》の間、艫《とも》の間の四つに区切り、胴の間は役人溜りで弓矢鉄砲などもおいてある。表の間は船頭溜り、※[#「舟+夾」、186−上−17]の間は船頭と二番頭の部屋で、艫の間は釜場《かまば》になっている。下棚の艫の間は牢格子《ろうごうし》のついた四間四方の船牢になり、表の間と胴の間は船倉で島々へおくる米、味噌、雑貨などを積みこむ。
 漁師たちは手わけをして、ひと手は上棚、ひと手は下棚にくぐって隈なくさがしまわったが、依然としてどこにもひとの姿はない。しまいには、下棚の底板を剥がして敷《しき》や柱床《はしらどこ》までのぞきこんだが、鼠一匹でてこなかった。
 帆
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