顎十郎捕物帳
氷献上
久生十蘭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)賜氷《しひょう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)六月|朔日《ついたち》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)久生十蘭全集 4[#「4」はローマ数字4、1−13−24]
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賜氷《しひょう》の節《せつ》
「これ、押すな、押すな。……押すな、と申すに」
「どうか、お氷を……」
「あなただけが貰いたいのじゃない、みな、こうして待っている」
「……ほんの、ひとかけでも……」
「いま、順にくださる、お待ちなさい……」
「じつは……」
「おい、お武家さん、おれたちは、こうして炎天に照らされながら二刻《ふたとき》も前から待っているんです。……つい、いま来て、先にせしめようというなあ、すこしばかり虫がいいでしょう」
「……まことに、申訳けないが、じつは……」
本郷、向ガ岡。
加賀さまの赤門《あかもん》で名代の前田加賀守《まえだかがのかみ》の御守殿《ごしゅでん》屋敷。
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