に、細かい手はずを書きつけた結び文でもつけてあって、それで持って行ったのだろうと、まあ藤波は、そう言うんです」
顎十郎は、ははん、と曖昧な声を出して、
「だいぶこじつけたな。……それで、子供はなんと言っているのだ」
「いつも烏凧ばかりでおかげがねえから、父親に白凧をつくってくれと前まえからせがんでいたところ、やっとのことでつくってくれたので嬉しくってたまらない。……夜があけるのを待ちかねてあげたのだ、と言っているそうです」
顎十郎は、うなずいて、
「だいたい、そんなところだろう。……おれならば、これほどの大仕事に子供なんざつかわねえ。……なんと言っても子供は正直だから、突っこめばすぐ底を割ってしまう。……だが、そうまで道具立てが揃っていて、相手が藤波じゃ、どう言いひらきをしてもまず通るまい。……気の毒なものだな」
「などと澄ましていてはいけません。……それで、あなたの御推察はどうなんです。なにか、おかんがえが出来ましたか」
「いや、まだまだ。……おかんがえなんてえところまで行っていない、トバ口ぐらいのところだ」
ノッソリと立ちあがると、凧糸をたぐって凧をおろしにかかりながら、
「
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