いう忠助の顔を眺めて見ると、眼は浄《きよ》らかに澄み、面《おも》ざしは、まるで照りかがやいているように見える。……こいつが殺したのじゃねえということはひと眼でわかった」
「それで、藤波のほうはどうでしたの」
「藤波はせんぶりの千太と堺屋へ出かけて行って、台所の棚に鼠の通い路があるのを見つけて、間もなくおれと同じように詮じつめてしまった。……ふふふ、今度はまず五分五分の勝負かな。……ただ藤波は堺屋へ行き、おれはうちで寝っころがって考えただけのちがいだ」



底本:「久生十蘭全集 4[#「4」はローマ数字、1−13−24]」三一書房
   1970(昭和45)年3月31日第1版第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2007年12月11日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全26ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング