顎十郎捕物帳
ねずみ
久生十蘭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)藤波友衛《ふじなみともえ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)深|笑靨《えくぼ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「譽」の「言」に代えて「石」、第3水準1−89−15]石《よせき》
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藤波友衛《ふじなみともえ》
坊主畳を敷いた長二十畳で、部屋のまんなかに大きな囲炉裏が切ってある。磨出《とぎだ》しの檜の羽目板に、朱房のついた十手や捕繩がズラリとかかって、なかなか物々しい。
数寄屋橋内《すきやばしうち》、南番所御用部屋。まだ朝が早いので、下ッ引の数もほんの三四人、炉端にとぐろを巻いて、無駄ッ話をしているところへ、不機嫌な突袖《つきそで》でズイと入って来た卅二三の男。土間で雪駄《せった》をぬぐと、畳ざわりも荒々しく上って来て、焼腹《やけばら》に羽織の裾をまくって、炉端へ坐りこむ。岡ッ引があわてて坐り直してごくろうさまでございます、と挨拶したが、そっく
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