んか、まるで大学の先生みたいなんだ。オートバイに乗る、テニスをやる、このごろは猟犬に凝って、ポインターやセッターを飼って毎日|蚤《のみ》を取ってやっているんだよ。気ぐらいの高いことはまるで公爵のお嬢さまみたいで、このハンカチの刺繍が気に入らないの、こんな音楽じゃ踊れないなんて駄々《だだ》をこねてばかりいるんだよ。昨日《きのう》などもお風呂をつかっている最中にこの石鹸《シャボン》は臭いからいやだなんて、愚図り出して、そこらじゅう水だらけにして跳ね廻ったあげく、腹を立ててすっかりその石鹸《シャボン》を喰べてしまったのよ。もっとも、気嫌のいい時はピアノを弾いたり、天井に足で字を書いたり、ぞっとするような見事な軽業《かるわざ》をして見せることもあるのよ、どうですか諸君、素晴らしいって、こんな素晴らしいペンギン鳥が他にもう一羽いるというなら、本当にお目にかかりたいくらいだわ。いいですか、いまその稀代《きだい》のペンギン鳥が、あの水槽から現われて諸君の目の前で、奇想天外の曲芸を演じます。なお今晩は諸君をお騒がせした謝意を表するため、オマケ[#「オマケ」に傍点]としてミミイ嬢の有益な農事講話がありま
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