〇|瓦《グラム》のバタを嚥下《えんか》して、山のように積んだ臓品のそばで自殺してしまった。その書置きには、膃肭獣《オットセイ》の愛を得ようとして心ならずも悪事を働いてはなはだ面目ない旨|認《したた》められてあった。
叱責したタヌの嘆きもさることながら、せっかくの書入れ時に大切な商売物《ネタ》をなくしたバルトリの悲嘆は目に余ったので、コン吉は見るに見かね、ミミイ嬢の遺品の皮をつけ、葡萄祭り中無事にペンギン鳥の役割を果し、久しく怠っていた学業に復帰するため、ある秋は夕方、タヌ共々にディジョンから汽車に乗って巴里《パリー》へ帰った。
底本:「久生十蘭全集 6[#「6」はローマ数字、1−13−26]」三一書房
1970(昭和45)年4月30日第1版第1刷発行
1974(昭和49)年6月30日第1版第2刷発行
初出:「新青年」
1934(昭和9)年8月号
※「|渡り見世物《フォラン》師」と「|渡り見世物師《フォラン》」の混在は、底本通りです。
入力:tatsuki
校正:伊藤時也
2009年10月26日作成
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