》に大火傷《おおやけど》をこしらえて、今でもウンウンうなってる始末なんです。そこで俺が虎になって出掛けたが、鉄砲を打ちかけられびっくりしてひっくり返った拍子に、木の根っ子でひどく脇腹をやられ、這うようにして、雑木林《マッキオ》のそばまで行ったんだが、そこで息が詰まってのびてしまった。あんた達という人は手にも足にも負えねえから、いよいよ最後の一幕をやって、今度は驚くだろう、逃げ出すだろうと様子をうかがってると、夜なかまで小唄なんか歌って一向驚く様子もないんだから、どこまで図々しいのかあきれて物がいわれない。もう芝居は種切れで、一同|兜《かぶと》を脱ぎました。大将《カボラル》なんざ、いい度胸だってんで感服してるんです」
一〇、コルシカ人の急所は大鍋《おおなべ》の中に。翌日の午後、コン吉はコルテの町からさまざまな買物を騾馬《ろば》の背に満載して帰って来た。それと同時に『極楽荘』の内外《うちそと》には大改革が行なわれた。入口にはヴェニス提灯が吊され『極楽荘』の表札の横には、新たに、
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タラノ村大集会所[#「タラノ村大集会所」は1段階大きな文字]
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