琲店《キャフェ・ド・パリ》の屋根にとまっている鳩を一羽、二羽……と数え始めた。
「お! みなで十七羽いる! さ、十七へ百五十法。十七の隣数《ヴォアザン》、16[#「16」は縦中横]17[#「17」は縦中横]、17[#「17」は縦中横]18[#「18」は縦中横]、14[#「14」は縦中横]17[#「17」は縦中横]、17[#「17」は縦中横]20[#「20」は縦中横]……というふうに、これへ二百法ずつ。残りは全部|黒《ノワアル》と奇数へ!」
 コン吉とタヌが青羅紗《タピ》の上を這い廻るようにして、賭牌《ジュットン》を配置する間もなく、出た数はまぎれもなく17[#「17」は縦中横]であった。金方《バンキエ》が熊手の先で押して寄越した二万八千法の賭牌《ジュットン》の小山を忙しく例の大袋へ投げ込んだ。
 公爵は、またもやしきりに眼玉の視角を変えながら、直感と虚心をさがしていたが、突然、窓のそとを指差して叫んだ。
「あ、あそこへ子供が大きな輪を廻しながらやって来る! さ、御両氏、急いで0《ゼロ》へお賭《は》りなさい! できるだけ沢山に!」
 ちょうど二十五万法勝ったところで卓《タアブル》 No.
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