わり二重括弧、1−2−55]と、披露《アノンセ》するとほとんど同時に、MANQUE《さきめ》 とは縁のない PASSE《あとめ》 の23[#「23」は縦中横]に落ち着いた。
お、これはいかん、とコン吉が、丸天井もつん抜けるような胴間《どうま》声を張り上げ、
「|小僧や、ここへ来い《ギャルソン・ヴィヤン・イシイ》! |小僧や、ここへ来い《ギャルソン・ヴィヤン・イシイ》!」と、けたたましく連呼したが、青札《ジュットン》は急につんぼにでもなったのか、泰然自若として身動き一つするでもなく、さればとて恥入ったような面持をするでもなく、のめのめと金方《バンキエ》の熊手《ラットオ》にさらわれていってしまった。
これは! と、あきれて、声もなく顔を見合わしている二人のそばへ、四方八方から駆け寄って来たのは、空色の家令服に白い長靴下をはいたカジノの給仕《ギャルソン》達、およそ二十人あまり、
「|何か御用で《ムッシュウ・エダアム》?」と、うやうやしく一斉にお辞儀をした。狐につままれたような顔をして給仕《ギャルソン》の大群を見廻していたコン吉は、おろおろと舌をもつらせながら、
「なんですか? 別に用事は
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