るコン吉とタヌの手に渡ることになった。
この賞金合計八百五十|法《フラン》のうち、四百法だけを今日までの子供らの養育費として受け取り、残りの四百五十法は、今日以来八人の子供を扶養することになった仏蘭西共和国政府へ、改めてコン吉とタヌから、扶養費の一部として献納することになった。
フランスの本土とこの「|美しき島《ベリイルアンメール》」をつなぐ定期船は、八月の青いブルタアニュの波を舳《へさき》で蹴りながら、いま岩壁を離れたところだ。村長、村民、麺麭《パン》屋の若い衆と肉屋の娘、それに八人の子供達が、岩壁の上に立ち並び、みな名残惜しげに手を振り声をあげて別れを惜しむのであったが、この八人の木像どもはいぜんとして唇をへの字に結び、眉根に皺《しわ》を寄せてむっつりと押し黙っているのだ。船からタヌが、
「do−do ちゃんご機嫌よう! re−re ちゃん、時々手紙をくれるのよ! fa−fa ちゃん、あまり高い所へ登るんじゃありませんよ」
と、せわしくそれぞれ八人の子供に声を分ち、うるんだ眼でうなずいて見せ、帽子を振り、ハンカチで洟《はな》をかんだ。
船は海老の生巣《いけす》を浮かせた堤
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