より八等まで五十法|宛《ずつ》。
時  一九二九年八月二十五日。午前十時。
所  当村小学校において。
品質審査 本土より専門小児医来島審査す。
       ベリイルランメール島
               ソーゾン村長
[#ここで字下げ終わり]
 一〇、子供は家の宝、福運の基。まだ明け切らぬ小学校前の広場には、集りさんじた出品者ならびに出品物の数数およそ二百人。木の切株に掛けるもあり、手洟《てばな》をかむもあり、何《いず》れ劣らぬ浜育ちの、おのがじし声高なる子供自慢、毛並から眼の色、耳の穴まであげつらって、これぞ今日の第一等賞《プレミエ・プリ》と、人はいえば吾《われ》もまた、そうはならぬと、果ては互いの子供の棚おろし、やれ耳がでかすぎるの色気が悪いの、さながら馬市の馬をひやかすようないい草。一方には昨夜《ゆうべ》の夜釣の小鯖《こさば》の目勘定、十字を切るもの、子をあやすもの。そこへ放し飼いの牛までまじって、モウモウ、オギャアオギャアと大変な混雑雑踏。さて、コン吉ならびにタヌは、八人の悪魔を引き具して、門前のマロニエの下に円陣を作り、いとも鷹揚《おうよう》に構えていたのは、多分然る
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