けつけて来てくれましたの。……何人いるのかしら。……一人、二人、三人。……廿五人もいますね。これだけの手がそろっていれば、なんだってできないっていうことはありませんのよ。もう、何も恐がらなくってもいいの。安心してちょうだい」
茜さんの眼が、涙の奥からキラキラ輝く。
「こんなに大勢の方が……。あたし、もう、これで……」
「おっと、どっこい、どっこい、ここまで漕ぎつけたのに、死にたくなったりしては駄目よ」
御母堂が、恰幅のいい身体をゆすりながら、茜さんの枕元へ近づいて行く。盛りあがるような膝でゆったりと坐って、
「茜さんとおっしゃるか。……こういう老人《としより》が来たからは、もう、何も心配はいりません。立派な赤ちゃんを生んで、お手柄をなさいよ」
「ありがとう……ございます……」
「出しゃばりのようだけど、ここには剛子の父も来ていますし、久世さんなんかもいられますから、もし、あたしたちがお取り持ちしていいなら、皆んなでじっくり相談して、必ず、そのお母さんという方を説き伏せて上げますから、そのほうの心配もしないでね」
「ほんとうに、……なんと、お礼を申し上げて、いいか……」
「こらこら、
前へ
次へ
全31ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング