キャラコさん
雁来紅の家
久生十蘭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)骨董店《こっとうてん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|間《けん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)久生十蘭全集 7[#「7」はローマ数字、1−13−27]
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一
市ヶ谷加賀町から砂土原町のほうへおりる左内坂の途中に、木造建ての小さな骨董店《こっとうてん》がある。
西洋美術骨董、と読ませるつもりなのだろう、はげちょろになった白ペンキ塗りの看板に、"FOREIGN ART OBJECTS" と書いてある。
一|間《けん》ほどの飾窓《ショウ・ウインドウ》のついた、妙に閉《し》め込んだ構えの、苔の生えたような家だった。人が出入りするのを見かけたこともなく、いつ覗《のぞ》いても、店のなかは仄《ほの》くらくしずまりかえっていて、チラとも人影が動かなかった。
天気のいい日は、家の正面にまともに西陽《にしび》がさしかけ、反《そ》りかえった下見板《した
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