になっているにちがいないわね、まあ、なんて面白いんでしょう!」
少年は、大きなためいきをついて、
「よかった、ボク。……では、まだ、遊んでいってくれますね」
「ええ、いつまででも!」
少年は、うれしそうにコックリすると、急に、物々《ものもの》しいほどの真面目な顔つきになって、
「お嬢さん、ボク、お願いがあるんですけど」
「ええ、どんなこと?」
「ボクに、お菓子のつくりかたを教えて、ちょうだい。ボク、絵だけはたくさん切り抜いてあるんですけど、どんなふうにしてこしらえるんだかわからないの」
といいながら、ポケットから小さな切抜帳《スクラップ・ブック》を取りだしてひろげて見せました。
切抜帳《きりぬきちょう》の中には、料理の本から切り抜いた青や赤や黄いろや白の、色とりどりに彩色された、原色版の美しいお菓子の絵がいくつもいくつも貼《は》りつけてありました。
少年は、うっとりと、それを眺めながら、
「ボク、じぶんで、こんなお菓子がつくれたらどんなにいいかと思いますの。時間がつぶせますし、それに、衛生的ですものね。……ボク、いちどお砂糖とメリケン粉を交ぜて喰べて見たの。でもどうしても、お
前へ
次へ
全40ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング