いつまでも泣きつづけているのでした。
お兄さま。
久世氏は危ないところで間に合ったのですよ。あのまま役にも立たない意地っ張りをしていたら、それこそ、ボクさんは今ごろだいすきな星の世界へ行って、ひとりで遊んでいるようなことになっていたでしょう。考えただけでも、身体がちぢむような気がします。
あたしが、星の世界の話をしたときの久世氏の顔といったらありませんでした。赤くなったり蒼くなったり、まるで瘧《おこり》にでもかかったようにブルブル震えていました。
ボクさんが何を考えているか、久世氏も、すぐ察してしまったのです。
久世氏があたしを引っ立てるようにして、お隣りへついたときは、もう夕方で、門がしまっていて、いくど呼鈴《よびりん》を押しても返事がありません。
久世氏は顔色を変えて、門を乗り越えかねないような劇《はげ》しいようすをなさいます。引きとめるのに、どんなに骨を折ったか知れませんでしたわ。
ようやくのことでなだめて、二人で土塀の穴のそばに坐って根気よく待っていました。
ほんとうのことをいいますと、ボクさんと約束などはしなかったのですから、今晩もまたやってくるかどうか、ま
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