ロ羅の身体にきせかけた。
キャラコさんは、ルビンシュタイン先生のところへピアノの稽古《けいこ》に行っている同級《クラス》の友達から保羅の噂をきいたことがあった。
保羅は、時々、先生のところへやって来ては、沈鬱な、典雅《エレガント》なようすで、エリック・サティやダリウス・ミヨオやオーリックなどを弾いていた。近代|仏蘭西《フランス》の音楽にたいする理解と感受性にかけては、この日本にあの内気そうな無口な青年に及ぶものはひとりもないのです。ルビンシュタイン先生がいつもそうおっしゃるの、と、その友達が話してきかせた。
音楽にすぐれた才能をもち、どの青年よりも謙譲で優雅だったというその保羅さんが、市井《しせい》の無頼漢のように、床の上に酔いつぶれているのは、あさましいというよりは、なんともいえないはかなさがあった。
(このごろは、もう、ピアノなんかもよしてしまったのにちがいないわ)
食堂のとなりの客間《サロン》へはいって見ると、楽譜を取り散らした隅のほうの床の上に、ピアノが置かれてあった痕《あと》がはっきりと残っていた。そこに、三《さん》オクターヴほどの、ミシンのような恰好をしたオルガン
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