しかし、そうだといって、いたずらに笑殺してしまうようなことは、あまり聡明なやり方だとは思われない。そんな意識の低いことではなく、二人の心をなだめ、充分にお互いの気持がわかり合えるようにしなくてはならないとかんがえていた。たぶん、それがいちばんいい方法なのであろうが、すっかりひねくれている二人の気持をどんなふうにしてやわらげたらいいのか、そのあてはなかった。
 キャラコさんは、長椅子《ディヴァン》から身体を起こすと、足音を忍ばせながら、そっとレエヌさんの部屋をのぞきに行った。
 頬のあたりに刺々《とげとげ》しいものがあるが、それを除くと、平和といってもいいようなおだやかな顔でしずかな寝息をたてていた。
 これが、ゆうべ、あんな邪慳な口をきいたそのひとだとは、どうしても思えない。むかし、桜の花の散る校庭で、ひとり離れてしずかに読書をしていた、優しい礼奴《れいぬ》さんのようすが眼にうかぶ。あの時とすこしもちがわない顔だった。
 近寄ってそっと、額に手をあてて見ると、かなりひどい熱だった。頬がポッと桜色になり、うっすらと汗をかいている。息をするたびに、どこかがピイピイと木枯《こがらし》のよ
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