高つかんで、キャラコさんのほうへ、不気味に身体を乗り出すと、
「ねえ、キャラコさん。あなた、さっき門をあけた爺《じじい》を見た? ……あいつ、いま天然痘にかかっているのよ。真症《ヴァリオラ》なの、ちょうど膿疱《のうほう》期だから危ないわね。あなたのようなお嬢さんがだい好きだから、抱きつくかも知れないわ」
そして、勝ちほこったように、高笑いをした。
九
夜があけかかっていた。
キャラコさんは、もう、すっかり落ちついていた。
保羅が、新聞社へ原稿を送ってあるというのは本当だとしても、その方法はたいして成功しそうもなかった。信用のある新聞は、そんなことぐらいでたやすく動かされるはずはないし、ちょっと調査をしただけで、保羅の悪計だということをすぐ見ぬいてしまうだろう。
また、自分にしても、赤新聞が書き立てる醜聞《スキャンダル》を恐れなければならないような弱いところはすこしもなかった。
もともと、世間の評判などは、それほど価値のあるものだと思っていないし、そんなものぐらいで自分の価値が左右されるとも考えない。書きたてたければ、書き立てたって一向差し支えのないことだった。
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