けるような口調で、
「要するに、われわれは、毎日ピクニックをしているようなものだね」
と、いった。ピクニックという言葉がおかしかったので、みな、クスクス笑いだした。
三枝氏が、まじめな顔でつづけた。
「……これが、単なる昼食《ひるめし》でない証拠に、こんなふうにしていると、なんとなく歌でもうたい出したいような気持になる。奇態《きたい》なこともあればあるものだ。……たしかに、なにか変調が起きたのにちがいない」
キャラコさんは、お弁当の殻《から》の始末をして崖の上にあがってゆく。が、夕方までぼんやりしているわけにはゆかない。三日に一度、往復四里の道を歩いて初繩《はつなわ》の聚落《しゅうらく》まで食糧の買出しに出かけなければならない。バスに乗って別所まで出かけることもある。四里といっても、地震で壊されたひどい石ころ道ばかりなので、夕飯《ゆうめし》の支度に間に合うように帰って来るのはなかなか楽ではない。歩くことなら決してひとに負けないキャラコさんも、買出しから帰ってくると、いつも汗みずくになって息を切らしている。
夕飯《ゆうめし》がすむと、四人はすぐに鉱石の分析試験にとりかかる。
キ
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