それとして、たとえば、あそこで咳をしていらっしゃる黒江氏についてだけ申しあげても、誰れかちょっと気をつけてあげさえすれば、もっと丈夫になられるはずなんですわ。……みなさまは、仕事のほうが忙《せわ》しくて、健康や日常の細かいことまでとても気をつけていられない。……それは、よくわかりました。……ところで、……ごめんくださいね、こんな生意気な言葉をつかって。……ところで、ここにブラブラ遊んでいる女の手がひとつあるんです。……自慢になるほどうまいというわけではありませんけど、そんなふうにばかりしつけられて来ましたので、皆さまがお仕事から帰っていらっしゃると、部屋の中がキチンと片づいていたり、ご飯ができていたり、たとえ一杯にしろ、熱い紅茶をあげたりするくらいのことはわけなくやってのけられるんです。お裁縫《しごと》やお洗濯にも相当自信がありますし、お望みなら、部屋の中に、いつも花ぐらいは絶やさないようにして置きますわ。……それから、あたしは咳によく利く薬草の煎《せん》じ方も知っているんです!」
 四人の目のまえに、敏感そうな顔つきをした娘が、正直そうなようすで突っ立ち、よどまない、率直な眼差しで、
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