んパン》ばかりね」
「ええ、そうです」
従兄《いとこ》の秋作氏の友達に、画かきや若い学者がおおぜいいるので、身体のことなんか一向かまわないそういうひとたちの無茶苦茶な勉強ぶりというものを知らないわけではなかったが、それにしても、こんなひどいのは初めてだった。
キャラコさんは、腹が立ってきた。
「なるほど、たいしたもんだわね!」
自分達の仕事が大切なら大切なだけ、こんな無茶苦茶な仕方をしてはいけないのだった。
(こんなにひどく咳をしながら、こんな生活をつづけていたら、それこそたいへんなことになってしまう)
どうしても、このまま放って置けないような気がしてきた。
このひとたちを丈夫にしてあげることは、間接に大きなものに寄与することになる。一分ほど考えたのち、キャラコさんは、四人にくっついてゆくことに決心した。
こういうすぐれた仕事に、じぶんも参加することができると思うと、たいへんうれしかった。
須走《すばしり》の村へつくと、四人は手分けして買物をはじめた。キャラコさんは、そのちょっとの暇を利用して、すぐそばの茶店で、山中湖ホテルにいる立上氏にこんなふうに手紙を書いた。
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