たちは、お互いの勇気を、もっと信用し合わなくてはいけないな」
「だから、いい教訓だといったわ」
「ほらね、ちゃんと知ってるじゃないか。……泣くことも、恐がることもいらないんだ。だまって信じてればいいんだよ、梓さんの理性を」
ユキ坊が、とつぜん横合いからひったくった。
「あたしたち、いくども誓い合ったわね。いろんな場合に理性でやってのけよう、って。……自分たちの時代のためにも、もっと、しっかりする義務があるって。……梓さんだって、たぶん、それを忘れちゃいないよ。決して、馬鹿げたことはしない。あたし信じてる!」
ピロちゃんが、うなずいた。
「そうなんだ。……キャラコさんを見ろよ。ちっとも、うろたえてもいなければ、あわててもいなかったぜ。キャラコさんは梓さんの理性をちゃんと信用しているんだ。……間もなく、きっと連れて帰ってくる」
鮎子さんは、うれしそうに手を拍《う》ち合わしながら、
「そうよ、そうよ。きっと、連れて帰ってくるわ。すくなくとも、そう考えるほうが、友情というもんだわ」
トクさんが、ようやく泣きやむ。
「そうね、たしかにそうだったわ。……でもね、……じゃ、いったい、何しにわ
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