って、やれるんだぞ」
愛一郎は、下草のなかにしゃがみこむと、夜目にもそれとわかる飛びだしナイフで、萱《かや》のしげみをめちゃめちゃに切りまくった。
「気ちがい! あなた、ポン中なのね」
愛一郎はナイフをポケットにおさめると、息をきりながら、やりかえした。
「気ちがいってのは、君のことだ。ゆうべも、夜中じゅう、裸足で家のなかを歩きまわっていたね……ママの部屋へはいって、なにをしようというんだ。言うことがあるなら、言ってみろ」
「あなたの言いかたは、あたしがなにをしたか、知っているという言いかたよ」
「ぼくが知っているのは、神月となにかコソコソやっているということだ、君は、たれかの持物になっているウラニウム鉱山を、ひったくりに来ている、パーマーというナチの手先なんだってね。君とパーマーと神月が、帝国ホテルのロビイで、話しているのを、この間、ぼくは見た」
カオルは、たばこに火をつけると、長い煙をふきだしながら、うたうような調子で、言った。
「あんたのような子供に、なにが、わかるというの」
「ぼくに、ものを言うなら、もうすこし、丁寧に言え……君はパパと結婚したがっているが、万一、そんなこ
前へ
次へ
全278ページ中100ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング