りの植木溜《うえきだめ》に植えてあるウズラ梅やタチバナの枝に、売約済のシュロ繩が結びつけてあった。この離屋を借りた日から、ひいきにしていた花木たちだったので、名残りが惜しくて、主人にたずねてみた。
「まあ、売れちゃったの?」
「売れました」
「かあいそうに……どこへ行くのかしら?」
「北鎌倉の秋川さんというお宅へ」
「あら、そうなの」
だしぬかれたようで拍子抜けがしたが、不愉快ではなかった。
歳暮《くれ》近いころ、れいの遺産の問題で秋川に会った。秋川は、
「この問題はあなたの手にあまるようだから、私が預ります。解決するまで、途中のいきさつは、いっさい報告しませんから、あなたもこのことを頭からぬいて、考えないようになさい」
とハッキリと言い渡されたので、その日は夕食をしただけで別れたが、そのとき、なにかのつづきで、花木たちの話がでた。
帰りぎわに、秋川が味なことを言った。
「愛一郎は、久慈さんのお嬢さんと結婚するつもりでいるらしいんです……それで、東京の家は二人にやって、私は扇ヶ谷に住むつもりでいますが、よろしかったら、部屋を使ってください。いま勤めていられる川崎の鉱山研究所へお
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