通いになるにしても、西荻窪から中央線で東京へ出るより、あちらのほうがずっと便利です……もし、いつまでも住んでくださるんだったら、これはもう、ねがってもないことですが……」
 秋川が遠まわしにプロポーズしていることは、もちろんサト子も察したが、
「ありがたいんですけど、植木たちに別れるのがつらいから、やはり荻窪にいますわ」
 と言いつくろっておいた。
 秋川は、そんなことなら……と事もなげに笑っていたが、サト子を北鎌倉の家にひきつけるために、植木溜の植木をそっくりそこの家の庭へ移すことを、そのときもう考えていたのかも知れない……
 愛一郎と暁子が鎌倉の駅口に迎えにきていた。サト子に合図をすると、愛一郎は小学生のように暁子と手をひきあいながら、車のほうへ駆けて行った。
 愛一郎が操縦席におさまると、暁子はすっきりした地色の訪問着の袖を庇いながら、
「あたくし、助手」
 と愛一郎のとなりのシートに辷りこんだ。
「ゆうべおそく、秋川さんから電報を頂いたんですけど」
 愛一郎は、スターターを押しながら、
「きょうは公式の会合があるはずなんです」
 と、こたえた。思いついて、サト子がたずねた。

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