コックの下働きと、メードがふたり……つまり四人ひと組になってホテルから出張してくる仕掛けなのだそうだが、こんなふうに行き届きすぎると、なにもする気がなくなる。
最初の二日ほどは、夕食は本館の食堂へ食べに行っていたが、それもやめた。食べる心配がないときまると、あんなにも叫びつづけていた胃袋が急にだまりこんでしまい、思うほど食べものを受付けてくれない。いまの東京では、外へ出ても、これ以上の贅沢があるわけはないと思うと、出掛ける気もしない。無為の生活のなかで、人間がだんだん物臭くなって行く経過がわかって面白くもあるが、おかげで寝つきが悪くなり、はやく有江のほうの話がきまって、ほんとうに金持になればいい……などと考えるようになった。
「夕食は、どちらで?」
とメードが聞きにきた。
「ここへお持ちいたしましょうか」
サト子は煮えきらない調子で言った。
「ちょっと待って……」
もったいぶっているわけではない。
ふやけたような生活をしているうちに、あたまのなかが甘ったるくなり、決断力が鈍って、ものごとをハッキリときめにくくなった。
「どうしようかしら」
「やはり、お持ちいたしましょう」
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