えば買えるのだと思うと、いままではたいして気にもしていなかった十三億という金の効用が、あらためて意識にのぼって、ぞっと鳥膚をたてた。
「途方もないことをいうのは、やめてちょうだい……それでなくとも、バカなことをやりだしそうで困っているんだから」
宙に浮いている感じは、スポンジの寝椅子に寝るときだけではなくて、ここの生活自体が、雲の上の青い天界を散歩しているような、のどかなおもむきがあった。
朝の九時、メードがそっとカーテンをあけにくる。サト子が食事をと言うと、ひとりは寝室用の細長い朝食膳を、ひとりはオレンジの果物盃《カップ》や、ジャムの壺や、生クリームや、コォフィや、焼立てのプチ・パンなどを載せた盆を持ってはいってくる。朝食膳の脚を起し、サト子の膝の上にまたがせて盆を載せ、スマートな手つきで食器の位置をあんばいし、サト子の胸にナプキンをひろげて出て行く。
気がむけば、朝食のあとで風呂にはいる。カランをひねったりすることはいらない。なにもかも、十語以内の命令でカタがつく。インター・ホーンのスイッチをあけて、バスを、というと、メードがなにもかもやってくれる。
芳夫の話では、コックと
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