に」
挨拶をすると、芳夫は風に飛ばされながら、いま来たほうへひとりで帰って行った。
三方にひらけた麻布の高台の地形を利用して、丘と谷のある見事な造庭をしている。
サト子の部屋の窓から見える部分だけでも、二千坪はあるだろう。いちめんの芝生で、余計な木は植えていない。紡錘形に剪定《せんてい》したアスナロを模様のようにところどころに植えこみ、その間に花壇と睡蓮の池がある。芝生の中の小径《こみち》に沿って、唐草模様の鉄骨のアーチが立ち、からみあがった薔薇の蔓が枯れ残っていた。
二階のバルコンに出ると、遠くに秩父の連峰が見え、反対の側には赤十字病院の軍艦のような白い建物が、芝生の枯色と対照していい点景になっている。
この五日、サト子は広大な洋館の翼屋《よくおく》で、のうのうと暮していた。
脇間のついた二十畳ほどの居間の奥は寝室で、つづきが化粧室と浴室。五メートルもある化粧室の一方の壁は、全部ローブをおさめる隠し戸棚になっている。両開きの大きな扉をあけると、二側になったチューブの横棒《バア》にハンガアが三百ほど掛かり、下は靴棚で、これも二百ほど仕切りがあった。
芳夫にこの家へ連れ
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