けだわ」
芳夫は居ずまいをなおすと、真顔になって、
「身につく話ってのを伺いましょう。あなたがしたいのは、どういうことです」
いつもの、しゃくったようなところはなく、ひどくしんみりとしていた。
「サト子さん、あなたはなにも知らないでしょうが、ことしの春から、これでもう一年近く、あなたのためにヤッサモッサやっていたんですぜ……だから、どうしてくれというんじゃない。あなたが幸福になれるように、純粋にそればかりをねがって……」
毎夏、鎌倉の海で遊びくらした仲で、サト子に苛《いじ》められながら、サト子の行くところならどこへでもついてくる、人なつっこい少年だった。キザな恰好をするので誤解されるが、姉のカオルが言っているようなつまらないだけの男ではないはずだった。サト子も甘いので、むかしのことを思いだして、つい親身な気持になった。
「あたし、お腹がすいてるのよ。いまの望みはなにか食べたいということだけ」
芳夫が座席のうしろに倒れて、腹を抱えて笑いだした。
「日本のルシル嬢が、腹をすかして泣いているって? こいつは、いいや」
さんざんに笑ってから、芳夫は涙を拭いて、
「ええ、それから」
「
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