貧乏にしておくのはよくないから、君のまわりのひとたちを保護する意味で、今日まで君の生活を見てきた……うちあけたところは、そうだったんだ」
マニキュアをした美しい手を、神月は目の前でうちかえしてながめ、
「君の家のほうへ、足をむけて寝たことはないんだよ、これでも」
「君の生きているあいだは、生活の苦労はさせないつもりでいる。贅沢を言いだせば、きりのないことだが、すくなくとも、現在はさほど不自由はしていないはずだ……人生の冒険も波瀾も避けて、平安に暮して行きたいと、いつか君が言っていた。こんなあくどい仕事に手をだそうとは、思いもしなかった」
「おれが、なにをしているというんだね?」
「いま、やりかけていることは、体のいい誘拐みたいなものだと言っているんだ……サト子さんは孤独な境涯にいるが、それでも、まちがいのないようにと心配している人間も、いくらかはいる。そういう中から、サト子さんをひきだして、無理にも孤立させようというのは、どういう企みによることなんだ?」
神月は、空うそぶいたまま返事をしなかった。
「君の最近の行状を見ていると、ひどく日本人ばなれがして、第三国人になったのかというよ
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