ちは理解できない。サト子はあてどもなくクロークのほうをながめながら、神月のほうの話をはやくきめて、いくらかでも前渡金を握りたい思いで、焦《いら》々してきた。
 サト子のほうは退屈なだけだったが、神月と父の間にはさまった愛一郎の顔は見ものだった。愛一郎は、死んだ母の古い恋文のことで、神月にぬきさしのならないところをおさえられている。父が神月を怒らして、なにもかもさらけだされたらどうしようと思っているふうで、ハラハラしながらふたりの顔をみくらべていたが、そのうちに、
「パパ」
 と、あわれな声で秋川に呼びかけた。
「サト子さん、ご用があって、いらしたんでしょう? パパばかりしゃべっていたら、お話ができないでしょうから」
 秋川は、わびるようにサト子にうなずいてみせた。
「失礼……お邪魔はしません」
 サト子は神月のほうへ向きかえ、
「だいたいのことは、カオルさんから、聞きましたけど」
 と控え目に切りだした。
「もうすこし、くわしいことを伺いたいんです。ファッション・ショウは、どこですることになるんでしょう」
 神月は象牙の長いシガーレット・ホルダーを、口のほうへ持って行きながら、
「リオ
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