ように、坂田省吾が牛車を曳きながら、無駄話をしにきた。ファッション・モデルというものは、仕事があるたびに、契約書をとりかわすのか、というような話がでたとき、坂田省吾が、こんなことを言った。
「東南アジアであったことですが、マレー語の契約書のほうは注文書《オーダー》で、英文のほうは、鉱業権譲渡の承諾書だったそうです……これからもあることですが、納得できないものには、絶対に署名しないようになさい」
 あのとき、坂田はなにを言うつもりだったんだろうと考えているうちに、坂田の言った言葉の重みに胸をうたれて、はっとわれにかえり、理解も納得もしないものに、署名することはないと思って、ペンを置いた。
「これは、邦文タイプで打った契約書と、同文なんでしょうか」
 天城は、なんともつかぬ冷酷な表情をしながら、
「邦文タイプのほうは、英文の翻訳だから、同文にちがいないでしょう。あのひとたち、みなサインしたわ」
「あの方たちはそうでしょうが、あたし、こんなむずかしい英文は読めないから」
「あなたって、思いのほか疑り深いのね。それじゃ、あたしたちのすることが、信用できないと言っているみたいじゃないの」
「そう
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